No.009

居心地のいい暮らし/小さく暮らす

宮崎県日南市 星倉の家

N.DAYSの取り組みの中で、今回は初めてクライアントの山口さんに文章をお願いしました. 竣工してから何度もお邪魔していますが、お話の中でインタビューではなく山口さんであればありのままの施主の目線でお話ししてもらえるような感じもありましたし、打ち合わせでも表現が的確で言葉にするのが上手いなと思っていました.

ですので今回はほとんどの写真を含め以下、クライアントからのN.DAYSです. 

(山田伸彦)

山田伸彦建築設計事務所さんを知るキッカケになったのは、雑誌「チルチンびと」の受賞ページでした。

HPから今までの建築物の写真等を拝見し、ディティールの美しさや、建築された家に洋風・和風といった偏りなく、どの家にもその家族に合った特徴や個性がありました。(N.DAYSも拝見してました)

その時はまだ、祖父の家をリフォームしようという話になっており是非お話してみたいとご連絡させて頂きました。

祖父宅の築年数からリフォームよりリノベーションだろう。でも学校までの距離や利便性、様々な視点から数年悩み考えた結果、新しい土地でお家を建てようという話でまとまりました。

注文住宅に決まった当初、小さな工務店さんを2.3件尋ねてみたのですが、イメージと違ったり、私達の予算では相手にしてくれない会社も中にはありました。

そのタイミングでやはり私が諦めきれないと再度山田さんにご連絡をさせて頂いたところ、自分たちの事を覚えていてくださり、厳しい予算にも関わらず、親切丁寧に相談にのって頂きました。

最初の山田さんの自邸訪問の際には、数点のプランニングに加え、模型まで作ってくださっていて、本当に感動しました。

そのプランニングも、私達の希望を全て知っていたかのような内容で、一目で気に入りました。

なので最初のプランから間取りの大きな変更はありませんでした。

自邸訪問やオープンハウスに参加できたお陰で、イメージがとてもしやすかったです。

建坪は18坪程しかないのですが、住んでいた祖父宅の1階部分(約23坪)で、家族4人快適に過ごせていた事と、大きい家よりも小さな家への魅力を感じていた事もあり、一般的な4人家族の居住スペースで考えると、20坪以下は狭いのでは?と思われることもありますが、私達には十分な大きさだと感じました。

小さければ余計な物を増やさず、少ない物で丁寧に暮らせる。

動線もコンパクトな上、共働き夫婦にとって家事、掃除がストレスにならないと思いました。

家族がばらばらに過ごさず、リビングに集まる家にしたかったので、最初頂いたプランの「ラウンジピット(※)」は、是非採用したいとお願いしました。

その他にも工夫が随所に施されており、部屋干しのできる脱衣所にはトップライトが付いていたり、カーポートは付けたくないけど、雨の日は濡れたくないというわがままに、軒を長くして濡れずに移動が可能になりました。(長い軒は私の要望でもありました)

着工してから、現場を見学することも楽しみで、家が出来ていく様子を間近で見ることが出来たことも貴重な経験になりました。

大工さんの丁寧な仕事ぶりや、現場に行かないと分からなかった事、建てば見えなくなってしまう部分のこだわりなど、職人さんたちの仕事にとても感動させられました。

現場やメールでの打ち合わせも毎回とても楽しかったです。

打ち合わせでも、選んできてくださるサンプルが毎回どれも好みで、ほとんど即決でした。

こちらの相談にも分かりやすく対応してくださったり、新しい提案などを頂いたりと、最初から最後まで大変信頼でき、安心しておまかせできました。

小さくても「質」「満足度」の高い、私達だけの家が完成し、家族4人で住むことができて大変嬉しく思っております。

住み始めてからは、1日の生活の流れで住んでみないと分からなかった便利さに感動させられています。コンパクトな家だからこその家事動線の良さ、キッチンの使いやすさなど、細部まで考え尽くされている間取りだと感じました。

造作家具はとても使いやすく、オリジナルの建具もどれもお気に入りです。

特にリビングのグレーの障子戸は閉めると雰囲気が一気に変わり、部屋全体がまた違って見えます。

LDKの照明は天井にはなく、壁付けとペンダントライトのみですが、夜は全く暗く感じず、ほんのりとした灯りがとても落ち着きます。

廊下から先には天井にラワンベニヤを、床にはPタイルを使用しており、プライベート空間からがらっと部屋の雰囲気が変わってとても好きです。

住み始めてまだ日が浅いですが、どの部屋も居心地がとても良いです。

壁には宮崎のシラス左官(メーカー:高千穂)を使用しているので、左官ならではの味があり、消臭効果もあるので、揚げ物をしてもすぐに臭わなくなります。

一目惚れしたラウンジピットも家族全員のお気に入りの場所になっており、TVを観るときはみんなこの中に入って観ています。

目線もグッとさがるので、こもり感が出てとても好きです。

私も詳しくはないのですが、ハウスメーカーなどでは、家具やカーテンなどは住み始めて自分たちで選ぶ。と思うのですが、山田さんにお願いした場合、家具・カーテンまでトータルコーディネートしてくださるので、部屋や家具がちぐはぐにならず、とてもまとまりのある空間になります。

キッチンや食器棚、下駄箱、洗面と、すべて我が家だけの完全オリジナルなので、とても使い勝手が良く、家事もとても楽しいです。

収納の少ない家なので、今まで使っていたものたちを見直しました。

お風呂のマットなど、当たり前に使用していたものをなくしたことで部屋もすっきりし、家事も楽になりました。

便利な物が増えた時代、あれもこれもと買い揃えるのではなく、自分たちにあった必要最低限のものを大切に使っていくことで、建物と物と人が調和し、私達家族が安らげる場所になっていくといいなぁと考えています。

4人家族で18坪と聞くと、周りからびっくりされますが、実際に自宅を見てもらうと「すごくいいね」「落ち着くね」「小さく感じない」と言ってもらえます。

私達夫婦もよく「本当自分たちにちょうどいいね。」「居心地いいね。」と話しています。

引渡しの際、「私達に会わなければ出来なかった家」と言って頂けてとても嬉しかったです。その家族を見て、そこから造りあげていく山田さんの建築の素晴らしさに、本当に我が家をお願いしてよかったなぁとつくづく思う日々です。

子供達が大きくなれば1部屋は仕切る予定です。

敷地もまだあるので、暮らしながら少しずつ自分たち色に育てていきたいなぁと思っています。

ポケットに入れて持って帰りたくなるような建築にしたかった
(初期イメージ:山田伸彦建築設計事務所)

※ラウンジピット:居室の床の一部を下げて、滞まりや休めるようにした場所のこと

施工:富永建設
photo:山口さん※クライアント
(最後の1枚:山田伸彦建築設計事務所、●印:Nacasa&Partners 金子美由紀)
text:山口さん※クライアント