2022.03.01

実践的2拠点居住のすすめ

事務所運営のことなどで聞かれることで一番多いのは、

「基本どちらにいらっしゃるんですか?」

です. 事務所を始めた当初は行き当たりばったりでやってましたが、10年経って何となくリズムが出来てきました. お施主さんと若い建築家さんによく聞かれます. 僕の事務所のスタッフ(希望の人)もそうですが、特に若い建築家さんが2拠点に興味をもっているように見受けられるので、参考になればと思います.

居る場所については一概に言えませんが大体、月の2/3東京、1/3宮崎という感じです. 現場の進み具合や仕事の量で増減するのと、長い休みなどでは前後を絡めて宮崎にいるので、年間を通してみると半分半分という感じになります. 僕の場合には、仕事の量とスタッフを東京に集中させたので東京の比率が多いですが、これは人によって違いは出そうだなとも思っています. (※以前スタッフを2つに分けたのですが、うまくいかなかったです.)

でも3年計画くらいで宮崎事務所の拡充を考えています.またスタッフを2つに分けたいなと思っています.体力的にはあまり問題なく出来ています.今のところですが.

現在模索中ですが、仕事の量が宮崎で増えたり、パートナー的なスタッフや協力事務所が出てくるとどちらかのウェイトが多くなるのではないかと考えています. 家族が宮崎にいるので、長期の休みは宮崎にいることが多いです.

僕は一定のリズムで生活したいと思っていて、割とルーティンに自分を当てはめるのが好きなので、隔週の金曜日に宮崎に移動、週明けの月曜日に東京に移動というスケジューリングをしていて、宮崎で役所周りや敷地確認などがあれば、前後1日伸ばしたりしながらスケジューリングしています. それに加えて東京の現場の定例を水曜日(東京にいる時には土曜日にもたまに行きます)、宮崎は住宅が多いので土曜日と東京に戻る前の月曜日に現場、施主打ち合わせは土日が多いです. 現場が好きなので、現場にはよく行きます. こんな感じです.

次に金銭的なこと.

2拠点については、事務所や住居の家賃と移動の費用が余分にかかるというイメージがあると思います. 確かにそれはあるのですが、それを超えるメリットもあると思っています.

宮崎の場合

僕の場合には、宮崎に自邸を建てました.それをクライアント候補の方にも見てもらえる設計事例として公開しているので、住宅ローンはありますがそれを補うものがあるのではないかと思っています. また自然にとても近い環境の大事さに気づかされます. 育った環境ということもありますが、食事や人などとても良く、ずっとここで仕事をして行きたいなと思っています. 地元を離れて改めて分かったのは、地方の建築の良さや豊さです. 職人さんや産地が近いので、うまく協同できれば良いなと思っています.

移動がドライブになって、ちょっとした気分転換になります.
庭は癒されますね.(自宅の庭です)

また事務所利用のマンションが隣にあることとまた、妻がグラフィックもしているので、プリンターなどの設備は共有できているので事務所費用は安く抑えられています.日中のほとんど自宅で仕事しています.

宮崎事務所(ちょっとだけ手を入れている.)
ほとんど自宅で仕事をしている.※上の2枚の写真 photo:見学友宙

東京の場合

東京では中央線(丸の内線)の荻窪に事務所を移転しました. その前は阿佐ヶ谷でした(そして修行時代や学生時代は高円寺).上京してからこの周辺に住んでいて、都心にも割と近くて便利で住みやすい場所です.下町の雰囲気もあり、便利が良い場所も多く好きな場所です. 子供や高齢者が街に歩いていて、街に食べ物の匂いがして、銭湯もあります. 昼間から何しているか良くわからない人がいるのが、良いなぁと思います. あまり電車には乗らずに住居から基本的に歩いて事務所に通勤しています. 田舎から出てきて、東京にいる時間も長くなりました.

一方での東京の気軽さや文化的で刺激などことも多く、今のところ僕には大事なことのように思っています.東京に拠点があることで、全国の現場も設計できるのが良いなと思っています.

東京事務所風景. 資料室とか工房みたいな雰囲気の事務所の方が落ち着きます.

僕は趣味というものがあまりなく、しいて言えば読書と散歩です. 東京はそれにぴったりの街だと思いますし、住んでいる街に本屋が残っているのが、良いなぁと思います.歩いて行ける範囲に書店があるのが何より好きです.(多い時には週に3,4日は行きます.)あとはお寺さんや神社も好きです. 知らない駅で降りて、ブラブラしたりひたすら歩いて帰ってくるみたいな事もよくやります.

散歩途中で最近見かけた面白い建築. これは現代のだましだましの置き屋根なんじゃないかなと思った.プロポーションが綺麗だなと思ったり.

久しぶりに通った道の建物が無くなっていて、いきなり暗渠が現れた. 東京って感じがした. 昔の土地の記憶.

移動費については、前記のとおりルーティンで前もって決めてしまっている部分があるので、早く飛行機などとってしまえば安く確保出来、住居はあるので宿泊費などはかからないです. (※あともうひとつ裏技があるのですが、興味のある人はお会いした方にはこっそりとお伝えします.)

東京―大阪の新幹線で約¥30,000-弱とすると、前もって飛行機を確保することで、それくらいもしくはもっと安く確保できます. 東京から移動して大阪泊まるより安く長く宮崎にいられます. 意外なポイントかもしれません.

最後に事務所運営について

修行時代のホテルの設計をバックグラウンドにもっている事に加えて、ホテル・こども園・公共施設などの比較的大きな物件と個人の住宅や店舗などの仕事の幅があることで、仕事の受注の波のリスクヘッジにもなっている部分があります。

僕の事務所では大きな物件のマネジメント力で住宅を設計しているとも言えるし、住宅の細かい配慮をもって大きな物件を設計しているとも言えると思います. プランニングや素材などもフラットに見ていて、場合によってはあまり住宅で使われない素材などを使ったりします.僕としてはそれが事務所の特徴だと思っていますし、仕事で大事にしている好きな部分です.

宮崎での住宅を設計した経験は、若手スタッフが地方で将来独立したときにも参考になると思います. こども園やホテルの経験は他のタイプの建築(特に住宅)にも生かされると思います.

これに加えて、地元である宮崎でキャンプ場の運営に協力していたり、設計以外の建築の周辺の活動もお声かけいただいたりしています.

宮崎白浜キャンプ場. 青島からほど近くの海沿いの気持ちの良いキャンプ場です.

コロナでは色々なことに気づかされました.対面を基本としていたので、当初は仕事が捗らずにヤキモキした部分もありますが、現在のテクノロジーの導入などで設計の部分では大分解消されたところもあります. でも、建築は現場があるのでなかなか難しいところもありつつ、この状況で改めて当たり前を見直して大事にしないといけないと思っています.

もちろんデメリットもあるので良いところばかりではないですが、楽しんで2拠点を楽しんでいます.東京と宮崎の比較ではなく、それぞれの場所の気持ちよさやそれぞれでの場所での建築と外部や空間と物との関係性を整えることでの豊かさをを生み出していきたいと思っています.

僕は2拠点というと養老孟司さん提唱する参勤交代のイメージをいつも思い浮かべます.

以上実践的2拠点居住のすすめでした.